動物介在教育・療法学会 理事長 柿沼 美紀
新年あけましておめでとうございます。
本学会の会員の皆さまにおかれましては、ご健勝にて新年を迎えられたことと心からお慶び申し上げます。
旧年中は、本学会の事業活動にご理解とご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
2018年7月にブタペストにあるEötvös Loránd UniversityではCanine Science Forum(イヌ科学研究フォーラム)がで開催され、学生とともに参加してきました。ここはAdam Miklosi博士が人と犬の関係の研究を1994年代に始めた大学であり、イヌの認知研究の世界的な拠点です。
https://familydogproject.elte.hu
第二次世界大戦ではブタペストは戦場となり、世界遺産となっている橋もすべて破壊され、国会議事堂もブダ城も攻撃されています。また、戦後はソビエトの支配下にあり、経済的にも決して恵まれた環境にはありませんでした。現在の政治体制になったは1990年のことでした。ハンガリーの経済は2000年ごろから急成長を遂げていますが、それでも EU諸国に比べると国民の生活は決して豊かなものではありません。
現在は観光地として多くに人が訪れ、街の治安も良くなっています。ドナウ河に面したブダ城や国会議事堂やいくつもの橋の夜景は有名で、多くの船が行き交います(写真)。ハンガリーの象徴とも言われいる国会議事堂は19世紀末に国の独立を示すために建設された豪華絢爛な建物です。しかし、窓の外を見ると外壁には第二次世界大戦の砲弾のあとが残っていました(写真)。
Miklosi 博士は社会がようやく動き出した時代に、限られた資源や科学研究費の中でさまざまな工夫をして多くの研究成果を世界に発信しています。オオカミとイヌの比較研究(写真)から認知や行動さらには高齢犬の研究などを行ってきています。大きな機材や予算を投じるのではなく、工夫を重ねながら画期的な研究を展開しています。その秘訣の一つは博士の行動力だと感じます。常に精力的に世界の研究者と交流し、若手を受け入れている、成果を世の中に発信していることです。
動物介在教育・療法学会の仕事をしていると、つい米国やイギリス、ドイツなどと比較して、日本はまだまだ、とか、日本では難しい、といった気持ちになることがあります。しかし、Miklosi博士を見ていると、それは言い訳でしかないこと気づかされます。
今年は本学会が日本で何ができるか、何を世界に発信するべきかを考えて活動をしたいと考えております。皆様におかれましてもぜひ一緒に前進していただければ幸いです。
最後になりますが、会員の皆様方の本年のご活躍とご発展、ご多幸をお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。
国会議事堂(窓の外にある砲弾の痕と夜景)
研究所のオオカミが参加者に挨拶する(参加者は餌をやったりしている)写真撮影をした