理事長 柿沼 美紀(日本獣医生命科学大学)
門前の小僧習わぬ経を読むといいますが、子どもは、幼い頃は周囲の雰囲気で、その場状況を理解し、作法を身につけます。さらに、周囲の人のモノマネをしながら、身のこなしや道具の使い方を学びます。小学校の教室を見ていても、先生の説明だけではわからなくても、お隣の子がやっているのを見て、やり方を覚える子は少なくありません。日本ではコロナ禍でも、学校再開を進めたのには、そういった背景があったからです。
研究者は、普段は限られた研究仲間と仕事をしていますが、学術大会などに参加することで、いろいろな人の考え方に触れ、刺激をうけます。人には共感や模倣を通して学ぶ力が備わっていますが、それは目の前に人がいることで成立します。特に自分が信頼する人からは多くを学びます。人は長年そのようにして価値観や技術を次の世代に繋いでいきました。やがて文字を使い、情報を目の前にいない人にも伝えるようになり、今では画面越しに沢山の情報を伝えています。20世紀にはそのためのたくさんの発明が行われました。コロナ禍、私たちはその技術をこれまで以上に活用し、情報の伝達や共有を行いました。最初は対面でないと、という人たちもいつしかオンラインで会議をしたり、飲み会に参加しています。一年半のオンライン導入の結果、オンラインの便利さは認めながらも、やはり対面で接した方が意思疎通ができる、と感じているようです。
今年はASAETでは大会長の強い思いで、対面とオンラインのハイブリッド型の学術大会を開催できることになりました。対面で開催される学術大会は参加者が非日常的な空間で共に過ごす時間を与えてくれます。自宅で気軽に参加できるオンラインにはその手軽さがあります。コロナを通して、私たちは対面の重要性、そしてオンラインの便利さの両方を実感することができたのではないでしょうか。
皆様がそれぞれの形で本学術大会を満喫していただければと思います。そして来年はより多くの方が対面で参加できることを願っております。